有田の窯元さんの多くは後継者問題に苦慮しています。私が出会った窯元さんはいずれも教育熱心で、子供は慶應、早稲田などの有名私立だったり東大などの国公立大学に行かれています。

廃窯になって久しい窯元の跡地。
へー!将来が楽しみですね!というと、
いやぁー「外貨」を稼いでもらいますよ、と。
?どういうことですか?(´・_・`)
曰く、窯焼き(焼き物業のこと)では食っていくのが大変だから、「外」で稼いできてくれたほうがいい、、という意味らしいです。彼が継いだら、この会社ももっと発展すると思うんですけどねぇ、と思ったりします。大人の勝手な言い分ですけど。
家業を残すために、子供がいない家は、養子縁組をしたり、娘しかいない場合は、婿養子になってもらうそうです。

老舗の窯元さんには古くから伝わる技や技術がある。
また、窯焼さんはほとんど離婚しないそうです。(真実は神のみぞ知る、ですが)。なぜならは、家業において、夫婦はそれぞれ役割をもっており、いなくなったら困るからと。
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日本の伝統工芸を支える職人さんのほとんどは世襲制です。
伝統工芸系職人の特徴
陶芸、漆器、和紙、伝統家具、さらには竹細工、刀剣、羽子板、人形、能面、和凧、木彫り細工など、日本に昔から伝わる伝統工芸品を作るのが伝統工芸職人。40代、50代でまだ若手という奥の深い厳しい世界であり、収入も決して多くないが、海外にも誇れる技術ということで評価は高い。伝統工芸職人はもともと主に世襲制だったが、後継者不足が問題になり、広く弟子を受け入れたり、養成学校を設けたりする例が増えてきた。近年はこのようなルートで職人になる例が少なくないが、分野によって細かい状況は異なる。技術を極めるまで修行に耐える力、地道に努力を続けられる根気強さ、伝統を後世に伝える使命感がなければ続けていくことは難しい。(参照:分野別職業ガイド)
親から「継げ、継げ。お前が継ぐのだ」
と呪いのように言われて、ここまで来てしまった?
先日、テレビで、歌舞伎の海老蔵さんがでていました。そこにはお父さんのモノマネをして歌舞伎の真似事?をする可愛らしい2歳の勧玄くんの姿があり、将来は何になる?という質問に「かぶきやくしゃー」と答えていました。
出典:https://twitter.com/fujitv/status/726929199919853568
歌舞伎だから特別ではなくて、有田でも、好調なアノ窯元さんやコノ窯元さんの所にいくと・・・子供さんがキャッキャと遊んでいます。親である窯元さんは自慢気に自分の仕事を見せていたり、実際にろくろを使わせてたりしています。
ある窯元の息子さん(超有名大学!)の息子さんは「窯元を継ぐことは、仕事の選択肢になっています」とおっしゃいました。続けて「でも、両親は、ぼくに”継いで”くれ、と言わないんです。だから、継いではいけないのかと思っているんです・・」。と。
彼のお母さんが「なんで継ぎたいの?」と聞いたところ、息子さんは、
「だって、お父さんもお母さんもすっごく楽しいそうに働いているんだもん!」と。
・・・そうだよね。
親(人)が生き生きと働いていることが、一番わかりやすいメッセージなんだと思います。
先日、ある窯元さんから言われました。
この窯元さんは当初「窯焼きは、家業だから継いで当たり前。”やりがい”なんて考えたことがない」とおっしゃっていました。お子さんたちは、工場に入ったことはほとんどなく、今は東京にお住まいのご様子。ここ十数年間、毎日、朝2:00から夜まで働きづめでご苦労をされていましたが、その長いトンネルからようやく抜け出せそうな状況になっています。
窯元さん:「南雲さんには、いつも怒られてばっかりでした。でもね、この前、初めて思ったんですよ。窯焼きという仕事も悪くないなぁ・・って・・・」
!
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そう思っていただけて、なによりです。
その窯元さんは何回も泣かしてしまったし、まだまだ課題を残したままに終わってしまったけれど、それでも、最後にそう思ってくれたなら、私がいた成果はあったのかな、、などと思いました。ぜひ、その心境の変化を理由とともにお子さんにも伝えて欲しいです。
さて、6月30日をもって、今までやってきた仕事(の契約)は終わりました。
当初は2017年3月末までだったこともあり、いくつか心残りがあり、これで東京に戻るのは忍びないし、情けない・・と凹んでいたのですが、幸いにもその関係筋から思わぬ仕事が舞い込んできました。おかげで予定通り、有田でお仕事ができることになりました。
数多くの「気づき」や「学び」そして「喜び」を与えてもらった、この仕事。関係者の皆様には、このチャンスをいただけたことに深くお礼を申し上げます。ありがとうございました。
ハゲができたり、体重が2週間で3キロ痩せるような辛いこともありましたが、辞めたいとは思いませんでした。先が見えない時でも、毎日、一歩ずつでも前に進むと、絶対にゴールすることを知っているから。(スペインを踏破した経験があるから断言します。)
有田着任の前日までいたスペイン(スペイン横断800キロ46デイズ)
7月からは、奮闘記のセカンドステージが始まります。そこもきっと山あり谷あり。そんな毎日の中から発見したモノ/コトを綴っていきたいと思います。
これからもよろしくお願いいたします。
<有田奮闘記の総集編>
1)掃除をさせてください!から始まった仕事(信頼関係の構築)
2)車を作るように焼き物を作ろう。(生産性)
3)別名「夫婦ゲンカ」という名の「経営改善会議」(コミュニケーション)
4)会計士さんを怒鳴ってしまったアノ日(財務会計)
5)社長、これでは儲かりません。(利益と原価)
6)ブランドは1日にしてならず。(ブランディング)
7)『知っている』と『できる』は違う、ってそういう事か!(実行あるのみ)
8)一人で生きていくのは難しい(コミュニティ形成)
9)好きなものを作るのはマスターベーション?(コンセプトの重要性)
10)どうして僕に継いでくれって言わないの?(後継者問題)