先日の寺子屋(有田の家に窯元さんを集めた勉強会)で窯元AさんがBさんに言ったセリフ:あなたね、1年前の南雲さんは怖かったんだから。でも、今は大分丸くなったのよ。
Aさんは私の隣にいるので、当然、その話は私にも聞こえており、驚いたBさんはAさんに・・・
Aさん、Aさん、酔っているんですか?
本人がいる目の前で、そんな、はっきりと言っちゃまずいですよ。
((((;゚Д゚)))))))
すると、Aさんは
いいのよ、いいのよ。
南雲さんとはそういうことが言い合える間柄になったんだから、もうなんでも言えるのよねー?南雲さん?
笑。そうですね。
・・・なんか、うれしかったデス。( ^ω^ )
着任当時の私は今よりもっと頭でっかちでした。こっちも何をどうやって進めればいいのか解らずに必死なので、余計に怖かったと思います。すいません・・。
窯元さんたちはほとんどが家業のため、学校を卒業してすぐに実家で働く方が多いです。

窯元には必ずある神棚。毎日、新鮮な水と榊が備えられている。皆さん、大変信心深く、こうしたお参りはかかさない。
経営のやり方は、焼き物の作り方も含め、基本的には一代前の経営者がしていたことを引き継がれています。マニュアルや”引き継ぎ”によるものではなく、一緒に働くことで自然に身についたようにお見受けします。
ある窯元さんの経理も20年前から変わらないやり方でした。(ちなみに会計士さんを怒鳴ってしまったアノ窯元さんです。)ざざっと決算書を拝見して、経理担当である奥様に・・
コレとアレは、絶対に減らせます。
ただちに減らさないとまずい状況です。
まずは、お金の「入」りと「出」をみましょうか。
というわけで、お手製の”資金繰表”と”予算管理表”をエクセルで作って渡しました。
ところが、です・・。
1ヶ月経っても手づかず
あれ?(´・_・`)
南雲:「どうしました?」
窯元さん:「あの・・・なかなか経理をやる時間がなくて」
南雲:「じゃ、私なりに時間管理のコツがあるので、真似してみますか?」
毎日、様々な急ぎの仕事がふってくると、優先順位はわからなくなるよね、と思い、南雲流の時間管理を教えてみました。
で、2ヶ月経過。
あれ?
まだ、やっていない・・・。(´・_・`)
南雲:「あれ?なんでやらないんですか?」
窯元さん:「他に”いろいろと”急ぎの仕事があって」
南雲:「じゃ、ちょっと仕事量を調整してみましょうか。」
社長と相談して、職務と組織を変更してもらい、仕事量を減らしてもらいました。
3ヶ月目。
・・・まだ、やっていませんでした。(´・_・`)
・・
これはどうしたことだろう?(´・_・`)
会社が大変な状況で、ご本人もやる気なのに・・・(´・_・`)

有田の目抜き通り。陶器市は以外は人通りもすくないが、ご覧の通りの風情のある街並み。
もしかして・・・
では、私と一緒に経理をやりましょう。
と、机に椅子を2つ並べてPCに前に座りました。
そして、郵便の束の中から請求書を出して、一つ一つハサミで開けて、その辺にあった「かご」にふり分けて、エクセルを開きました。
これは絵の具の請求書ですね。
どの費目にいれたらいいかわかりますか?
わからない?
では、会計士に聞きましょう。
見ていてください、と会計士に電話。念のため言っておきますが、私はどの費目か知っています。
絵の具は「材料費」という費目にいれるそうです。
で・・・この金額を材料費の費目の箇所に入れてっと・・・。
ということを、そこにあった請求書全部を一緒にやりました。
南雲:はい、終わりました。何分かかりました?
窯元さん:10分です。
南雲:そう、毎日たった10分のことなんですよ。
窯元さん:意外に簡単ですね!!!(喜)

有田工業組合の壁には、窯元の屋号がかかれたタイルが貼られています。
この窯元さんの経理処理は、この日以降、毎日行われるようになり、もちろん会計士さんのサポートもあり、なんとか財務改善を図ることができました。
3ヶ月目にして、わかったのは、
「泳いだことがない」人には、「泳ぎ方」を教えただけでは怖くて泳げない人もいるということ。だから、最初は顔に水をつけてから泳ごうとか、とか、次は「ビート板」を使ってみようとか。
多くの経営者は孤独なものだと思いますが、歴史と伝統に守られた地域だとより孤高なのではないでしょうか。早く改善したくてうずうずして自分がいる一方で、窯元さんにとっては、伝統的なやり方を見直し、経営改革を進めるのはバンジージャンプを飛び降りるくらいの勇気がいる。
そうですよね?
と、冒頭の会話の後でそう聞いたら
窯元Aさん:やっとわかってくれた?笑
南雲:やっぱりそうでしたか!最近、ようやくわかってきましたよ。時にはハシゴをかけたり、段差を低くするとかすると、きっと、安心して次にジャンプできますよね?
窯元Aさん:そーそー
φ(。。)メモメモ…
その時、ふと思い出したのは、前職の社長が言っていた
「お前の思う7割でよしとしてやれ」でした。
主旨が違うとご本人から怒られそうですし、窯元さんに対しては、とっても偉そうで恐縮ですが、ふと思い浮かんでしまった言葉です。
<有田奮闘記の総集編>
1)掃除をさせてください!から始まった仕事(信頼関係の構築)
2)車を作るように焼き物を作ろう。(生産性)
3)別名「夫婦ゲンカ」という名の「経営改善会議」(コミュニケーション)
4)会計士さんを怒鳴ってしまったアノ日(財務会計)
5)社長、これでは儲かりません。(利益と原価)
6)ブランドは1日にしてならず。(ブランディング)
7)『知っている』と『できる』は違う、ってそういう事か!(実行あるのみ)
8)一人で生きていくのは難しい(コミュニティ形成)
9)好きなものを作るのはマスターベーション?(コンセプトの重要性)
10)どうして僕に継いでくれって言わないの?(後継者問題)