into 私の思考

境界を越える時は

世の中には見えない境界がある。

コロナが蔓延して、人や国の境界は厚くもなり高くもなった。しかし、それは感じ方の問題なので、問うべきは「越え方」にあると思う。

武道に「間合い」という用語があり、これは距離感をとる稽古だ。
その要点は3つ。

●相手の全身が見えるまで下がる
●心が静かな距離まで近づく
●但し、それはお互いが一歩踏み出さないと領域に入らないところまで

実際に稽古をつけてもらうとわかるが、全然できない。遠すぎたり、近すぎたりしてしまうのだ。ともかくも、これが境界にたつ、ということだ。

問題は、その次。
どうやって境界を越えるのか、ということだ。
先日、その作法があることを知った。

「線の密意」。


これは柳宗悦が「民藝四十年」の中に書いた一節にある言葉だ。指摘がなければ読み飛ばしてしまう4文字を若松英輔さんは、こう解説してくれた。

「線の密意」とは、線には言葉にならない意図があるということです。「線の秘事」となると、言葉にならない想いが秘められているということ。朝鮮のような日本にとって近しい隣国でも「線の秘事」があるので、立ち入る時は小さくなって入らないといけない

その話を聞いて思い出したのは、神様が住まう島(日本だ)に行った時に、その島に住む同僚(日本人だ)が、ある場所で足を止めて言った言葉だ。

あのね、ここから向こうは神様の領域なの。ここを通る時は、まず自分の名前とどこに住んでいるか、それと年齢、最後に、よろしくお願いします、と言ってお辞儀をしてね。





日本の南にある神様がすまう島。

・・・

ああ、ここには、知性がある。そのやり方は、先住である神様に人間がことわりをして、供に生きていく知恵だ、と姿勢を正した記憶がある。

境界を感じるにも、境界を越えるにもルールがあるのだ。

 例えて言うなら、大好きな有名人が信号待ちをしていても、いきなり握手してはいけない。

考えてもみて欲しい。目がギラギラした人がいきなり目の前にたったらどう思うだろうか。逃げ出すのが普通だ。

だから、まずは、相手(自分ではない)が怖さを感じない程度の距離感を保ち「こんにちは。私、あなたの大ファンなんです。よろしければ握手してもらえませんか」と聞いたりする。もし、合意を得られたら、近寄って握手。断られても「わかりました。応援しています」くらいのことは言って欲しい。だって「線の秘事」があるのだから。

これから境界はますます高くなってしまう気がする。しかし、越えなければ孤立や分断を生むだろう。

東洋的な考え方に希望を感じ、まずは、今、私の目の前にある境界から越えていく。

※「民藝四十年」を読んでインスパイアーされて書いたエッセイ
※アイキャッチの写真は広報時代に訪れた「神様が住まう島」のビーチ

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