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小さな町に観光客がやってきた(上)

不思議な非日常が魅力

2019年4月21日佐賀新聞「ろんだん佐賀」寄稿

観光客を呼びこみたい。それはどの地域でも思うことであり、特に、現在、大挙して来日しているアジア圏からのインバウンドは魅力だし、2020年のオリピックも鑑みれば更に期待感は高まる。

ただ、どれだけの人が自力でインバウンドを集客できるのだろうか。オリンピックもそうだが、現在増えているインバウンドはアジア圏の著しい経済成長や行政政策の影響によるところが大きく、オリピック後の観光経済は予断できない。アジアの富裕層は日本を飛び越えて旅行するかもしれないし、行政は貴方の商品の質まではあげてはくれない。インバウンドだけに頼らずに自力で集客ができる国内に目をむけ、彼らが一度ないしは二度三度来てもらえる戦略を講じる必要がある。

地域観光を考える時、目をむけて欲しいのが、よその地域から来た人が何をみて喜んでいるかだ。地域には都市にはないものがある。佐賀県でいえば、磁器工場や茶畑、蓮根畑や酒造メーカの工場や棚田などがあげられる。地元の人にとって日常的な風景でも、よそ者にとっては心底ワクワクする光景なのである。よそ者が非日常だと感じるものの多くは観光拠点になる。

佐賀県嬉野市に、よそ者がワクワクしたことを商品化したところ、住民以外誰もいなかった地域にメディアが集い、観光客がそぞろ歩きするようになった場所がある。市内から車で15分ほどのところにある吉田地区だ。ここは肥前吉田焼という焼き物の産地で、県内はおろか市内でも知らない人が少なくない場所だった。産地の経済はかつての8分の1という規模で30社あった窯元も8社(組合加盟)という散々たる状況だった。

この地区にある老舗商社に眠る古い器を「お宝」に見立てて、一カゴ5000円詰め放題で販売する「トレジャーハンティング」(以降、トレハン)を行なった。薄暗くて今にも崩れそうな蔵は異次元に迷い込んだかのような不思議な非日常感。うず高く積まれた器は東京では見たことがないものばかり。お皿が埃まみれであることは一向に構わなかった。むしろ、それが本物感を醸し出しており、作りたくても作れない最高の演出だと思った。「これはイケます!」という言葉をなかなか信じない経営者を説得してサービスを開始。投資はほぼゼロ。地元の窯元有志らが蔵を整理し、東京に住む息子が手作りでWEBSITEを用意。軍手とカゴを買ったくらいだ。

重視したのは「告知」。顧客に来てもらうためには、商品やサービスが世の中に存在することを伝えないといけない。ここは非常に重要だ。まず地元の飲食店とホテルや旅館の経営者を招待して最初に楽しんでもらい、トレハンのチラシを店に置いてもらった。彼らのお客様に「吉田に面白いものがあるよ」と紹介してもらうためだ。もちろん佐賀県内の全新聞社とテレビに声をかけて取材にも来てもらった。 こうして誰も歩いていない吉田地区にチラホラと観光客が現れるようになった。その中にはインバウンドの姿も。インスタグラマーが投稿したトレハンの写真を見て、はるばる海を越えて、吉田まで来たそうだ。ここから吉田地区の快進撃が始まった。

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