私が関わる諸々の業務の中でもメインオブジェクトであり、ハイライトであるのが新商品開発。すべての窯元さんの新商品を紹介したいのですが、長くなるので、一つだけ紹介します。
まずは完成品をどうぞ!
Ceramic Mimic Fabric(セラミック ミミック ファブリック)
わ!これは、なに?何でできているの?
ってよく言われます。
ぱっと見には、リネンのように見えるからでしょうか。
極上の亜麻(リネン)に触れたような、心地よい肌触りの有田焼のタンブラーです。
これは、佐賀県有田の窯元「文山製陶」に伝わる伝統技法の「てびねり」を現代のライフスタイルに合うようにリファインしたもの。有田焼400年の歴史を超えて、生まれ変わった「布のような磁器」という意味の「ceramic mimic fabric(セラミック ミミック ファブリック)」というブランドです。
この商品の重さは、同じ大きさの磁器の半分程度。とても軽くて、薄い。
「たたきしめる」という製法に特徴があり、華奢(きゃしゃ)で繊細なみかけにもよらず、通常の磁器と同等の強度があるんです。
繊維状のシワが気化熱の効果をもたらして、冷たいものをいれると、いつまでもヒンヤリ感がつづきます。
これでビールを飲むと、サイコーです!
ものすごく薄いので、唇にすいつくような感触。いつまでも口につけておきたい心地よさです。
この商品を作った方は文山製陶の社長中島正敏さん。
それに、プロダクトデザイナーの磯野さん(左)とグラフィックデザイナーの江副さん(右)。
二人は、職人さんの気持ちに寄り添いながら、時に厳しく、本質をつきとめ、チームとして商品造成に尽力してくれました。
商品開発は、
●シャチョーの好きなものってなんですか?
●やりたいことってなんですか?
●得意なものってなんですか?
から、始まります。要はブランド・コンセプトを作りたいんです。
でも、最初の数ヶ月は、うーん???になってしまう。
作りたいものを作るなんて、マスターベーションにすぎんでしょ、とか言うし・・。苦笑。
ようやく絞り出したものは・・・
売れるものを作りたい!
・・
そりゃそうだ。
だけど、考え方としては社長や従業員の「作りたいもの」や「得意なもの」の中から「売れるコンセプト」を組み立てて、「売る仕組み」を作りたいなと。だって、手仕事中心な職人さんなんだから得意なものや好きなものをつくったほうが楽しいだろうし、モノを良くしたい、たくさん作りたいなど、魂がこめられる。工業製品をつくっているわけじゃないからなぁと(^_-)。
「コンセプト」の核は、社長の心の中、会社の歴史や過去の商品に隠れている。
というわけで、それを探るために、飲み会開催。
しかし、ここは昼間の出来事が夜には町中に広がると言われている小さな街。
男性である社長と女性である私。ガイヤの余計な詮索はカンベンして欲しい!なので、だれかが有田にきた時に、その人を引き入れるか、もしくは、気兼ねなくお話できる有田の家で家族も呼んでお食事会。

これは単なる豪華な食事会ではありません。器(魚がのっているのは違う)は全部窯元さんの器。窯元さんは自分の商品をシゲシゲと観察しながら使うことは少ないとお見受けしています。なので、使って、洗って、拭いて、しまってみようと。こんなことをしました。
そんな会が何回かあった、ある日。
飲み屋で、シャチョーは「”ニッカ”のハイボール」をオーダーしました。
銘柄指定なんですね。お好きなんですか?
と聞いたら、だまって、このポーズ。
ん・・・あ、ひ、ひげ?・・・・・
笑
ちなみに、このシャチョーは、いつもスターウォーズやミッキーマウスのTシャツをきています。出かける時の靴は赤で、アメカジとイタカジのミックス。
シャチョーのファッションコンセプトはなんですか?と聞いたら、一言。
ギャップかな。(洋服のブランドではない)
・・・
笑
たしかに、このお顔でスカル(骸骨)のTシャツとか黒のパンツとかだったら、そのマンマです。
・・・これは面白いものが出てきそうデス。
深層心理を探る一方でやるのは、お宝探し。
いくつかピックアップした焼き物を机にならべた時に、シャチョーが、ぽつり。
僕、というか、文山の「もの作り」の原点は、素材の本質に忠実になって、その良さを引き出すことなんだよね。その良さを引き出すためには、加飾はシンプルがいいと思っている。それが売れるかどうかはわからないけど・・と。
!
つ、つまり、すごいうまい玉ねぎがあったとしたら、それを丸ままオーブンで焼いて、極上のオリーブオイルをかけて食べる感じですか!?
そうだね・・。有田焼の土(石)は、とても素晴らしい素材をつかっていて、、うんぬん・・。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)’・*:.。. .。.:*・゜゚・*
では、それをやりましょうよ!
社長の真髄、文山の真骨頂があるのはどれだ!?と、デザイナーさんと社長ご夫妻で一緒になって、ああでもない、こうでもないの議論。
そして、たどり着いたのが、こちら(BEFORE)。
これは「てびねり」という文山が40年前に開発した特殊な手法で作られたヒット商品でロングセラー商品です。
実は、こちらの商品は有田焼400年の歴史に残る100点の一つなんです。
ちなみに100点の中に、文山さんの商品は、他に2つ(合計で3つ)あります。数多ある窯元さんの中で、歴史に残る商品が3点もある窯元さんはそう多くありません。こうしたことからも文山さんは歴史に革命を残すような技術を各年代で築いてきたことがわかります。ちなみに、こういった素晴らしい業績は、奥ゆかしい窯元さんの口から直接聞くことはなかなかできません。(早く言ってくれたらいいんだけどなぁ)
この「てびねり」の本質を追求して完成したのが、Ceramic Mimic Fabric(AFTER)です。
チーム一体となってそれぞれの作業を遂行し、ようやく、この愛すべき商品を世の中に紹介できる運びとなりました。

当初はWIFIが入っていないかった文山さんの事務所。今は、世田谷、目黒、博多、有田をつないでのスカイプ会議で効率よく議論。ITって素晴らしい!
ぜひ、新しい岐路にたった文山製陶の窯元さんご夫妻、そして、CERAMIC MIMIC FABRICをどうぞよろしくお願いいたします。
お願い:個人の方は、もうすぐ完成するオンラインショップをお待ちくださいませ。バイヤーさんはHPの問い合わせからお問い合わせをお願いいたします。個人の方で、今すぐに、どうしても買いたい!という方は2016年7月末までなら私に問い合わせてください。
<有田奮闘記の総集編>
1)掃除をさせてください!から始まった仕事(信頼関係の構築)
2)車を作るように焼き物を作ろう。(生産性)
3)別名「夫婦ゲンカ」という名の「経営改善会議」(コミュニケーション)
4)会計士さんを怒鳴ってしまったアノ日(財務会計)
5)社長、これでは儲かりません。(利益と原価)
6)ブランドは1日にしてならず。(ブランディング)
7)『知っている』と『できる』は違う、ってそういう事か!(実行あるのみ)
8)一人で生きていくのは難しい(コミュニティ形成)
9)好きなものを作るのはマスターベーション?(コンセプトの重要性)
10)どうして僕に継いでくれって言わないの?(後継者問題)