• 林業の町を観光で活性化する(1)

    林業の町を観光で活性化する(1)

    「林業」は、きこりとか林野庁や、製材所や木工職人などの木に関わる人たちだけの問題ではありません。私たち地球人に関わる問題です。

    それは「木」つまり「植物」は「地球全体」の生態系の浄化作用とか循環システムになくてはならないものだからです。私たちは植物なしでは生きていくことは今はまだ難しいのです。

    なぜか?という話もしたいのですが、そうすると、フルボ酸とかフミン酸とかの海と山の関係の話をしたくなるので、また今度。

    ともかくも「林業の町を活性化しませんか」と言われた時に、(町は小さくても)これは、地球規模の仕事だ、と身が引きしまる想いでした。しかも、その手段が「”観光”で」とかと言われては、日本の観光をヤバくする担い手の一人だった私としては、これは、自分のためにある仕事ではないかと思ってしまう訳です。

    そうしてやってきたのは「埼玉県ときがわ町」。

    町をリサーチする時の最大のポイントは「違和感」を大切にすることです。その違和感から「土」とか「地形」とか「歴史」に向けて掘り下げていきます。

    余談ですが、前職時代、その会社の一番えらい人と文化的な町を歩いていたら、「この町の行政には、男性が多いはずです。」と。

    (でた!またヘンテコ視点)「・・なんで、そう思うんですか?」と聞くと、

    「だって、裸の(ブロンズ)象がたくさんあるから」と。

    「・・しかし裸というものは芸術的な視点においては美の象徴であり・・」

    そこからの会話は割愛しますが、その時の学びは、裸と男性の関係では全くなくて、ボーバクと歩かない、常にアンテナをたてよ、ということでした。

    閑話休題

    ときがわを歩いていたら、通りの向こう(道路を挟んで向こう側から)から、子供たちが、めちゃでかい声でワタシにむけて「こんにちはぁあああ」と。

    下校時間と重なってしまえば、小学生の群れから「こんにちは攻撃」の連射をくらいます。しかし、挨拶は人間関係を構築するための基本なので、ああ、日本の未来は明るいなぁ、とかって嬉しく思ってしまいます。そうして思うのが、

    ここは文化度が高い、ということ。

    その次に思うのが、ここには神社がたくさんあるはず、ということ。

    と、あたり(仮説ともいう)をつけてリサーチしたら、案の定、多数の神社や寺がありました。

     東北旅行で見かけた畑と山との間に佇む小さな神社。

    そしてちゃんと「お祭り」をしていることもわかりました。

    神社や寺の存在目的や意義は数あるが、中でも私が一番いいなぁと思っているものは「自然に感謝する場所」です。

    私たち日本人は昔から自然とともに生きて、ありとあらゆる自然の中に神様がいるという前提で暮らしてきました。人の知恵とか技術などの人為的努力の前に、「作物は自然から贈り物」、であるという感じでしょうか。その感謝の気持ちが形になったのが「お祭り」。

    我が家の近所にある神社で行われたJAZZライブ

    「祭り」は人と人とをつなぐ機能があります。例えば、テント一つをとっても一人で張ることは無理です。口を聞いたことがない相手に「そっちを引っ張って」とかの会話をせざるをえません。たまたま同じ地域に住んでいる、というだけの目的や利害が異なる人たち。ちなみにPTAも同じ効能があると思います。

    利害のない人と会話をしながら一緒に作業をする。

    これは人間関係の構築を円滑にする一つの手段でしょう。以下の動画を慶應SFCのパブリックリレーションズ戦略という講義でよく生徒に見せています。商品ど真ん中訴求ではなく、人間関係の構築に寄与しますよ、という切り口もプロモーション的になかなか良い。4分30秒。ご存知ない方はぜひチラ見を。

    神社があり、祭りが行われているとするのであれば、こんな感じで共同体が築かれているのではないかと考えています。

    「ときがわ町」にはそのベースがある。

    というのが最初の印象でした。

    とはいえ、私が興味をもったのは、ときがわの地形でした。神社をベースに調べていたら、それ以上に多いのが「城」だったのです。次回は「城」の話をします。

    キーワードは「城と天文台」と「道と川」です。

    よく見えませんが、すごい数の城跡があるのがわかります。

     

     

  • 在庫が宝になる。吉田焼の成功に見る「マイクロツーリズム」の未来

    在庫が宝になる。吉田焼の成功に見る「マイクロツーリズム」の未来

    2020/6/24Forbes掲載記事。本文はここには掲載していませんので、詳しくはURLをクリックしてお読みください。


    自分の「風土」に気がつき、磨きをかけ、世界に発信する。

    これは、サグラダファミリアを修復している外尾さんが言っていた言葉です。あのサグラダファミリアでさえ、当時は地元の人に見向きもされなかったそう。

    これは本当にその通りで、地域の方とお話すると、開口一番に言われるのは「いやー、うちには本当に何にもないんですよ」。でも、私が分析して見えてきたことをお話すると、「ええええ!そうなんですか!うちってすごいんですね」ととても誇らしそうに言います。


    自分で自分のことに気がつくのは難しいことかもしれません。だから、過去の事例が参考になればと思って書きました。

    詳しくは本文をどうぞ
    https://forbesjapan.com/articles/detail/35330

    全国で旅産業に従事する皆さま。いつか需要はもどってきます。SARSの時も311の時もそうでしたから。ウィルスの拡散や罹患を考えれば、顧客は、遠くへはいけない。事業者も、遠くからのお客様は素直に喜べない。ワクチンができるまでは3密を回避しつつ、身近な魅力を発掘して周囲の人たちと力を合わせて磨き、近圏内でお金を回して欲しいと思います。
    最近のお気に入りの言葉は「刃を研ぐ」。
    コロナ期に観光コンテンツを増やしておけば、開けた時に、地域観光は爆発力をもったものになると思います。私も前職で蓄えた知識と知恵を経験を使って、できることしていきます。旅産業のみなさん、頑張りましょう。えいえいおー!

  • ワインに詳しくない私がワインを選ぶ、もう一つの方法

    ワインに詳しくない私がワインを選ぶ、もう一つの方法

    Forbesさんに大して詳しくもないのにワインのことを書きました。

    表向きはワインのことですが、本質はワインのことではありません。日本酒は確実に同じことがいえます。もしかしたら、焼酎も、ひょっとしたらお茶も言えるのかもしれません。

    差異があるものは必ずその理由があります。地域によって異なる場合、大抵、その差異の源は「土」もしくは「地形」か「歴史」に理由があります。

    よかったらご一読ください、

    https://forbesjapan.com/articles/detail/33233

  • 箱根を「温泉」でなく「土」で語る 自然が生み出す工芸品の魅力

    箱根を「温泉」でなく「土」で語る 自然が生み出す工芸品の魅力

    FORBESさんに書きました。今回は「箱根」。「土」とか「地形」から地域を見たら、いつもと違うものが見えるかも?と言う内容です。

    ところで箱根の魅力を視覚化したいと思いグラフを作ったところ、予想以上に面白いのが出来ました!(←自画自賛)

    自分で描いといて自分で驚くのもなかなかですが、よろしければ皆様にも見ていただければ嬉しいです。

    また、記事には書いていませんが、前職を辞めた直後に「掃除をさせてください」と門を叩いたのが写真の作品を作った「露木木工所」さんでした。

    今の私があるのも露木さん親子のおかげ。卒業祝いにいただいた寄木細工のぐい呑みは一生の宝物です。

    https://forbesjapan.com/articles/detail/31731

  • 鹿児島と芋焼酎 切っても切り離せない「土」の関係

    鹿児島と芋焼酎 切っても切り離せない「土」の関係

    ご縁があってFORBESさんに連載を持つことになりました。

    この連載では1度やれば誰でも名乗れる「元」広報という不変な立場(笑)で、全国を旅して発見した「地域魅力」をご紹介していきます。

    「どんな地域でも、人の暮らしがある限り、必ず魅力はある」と思っており、それを読み解くには「土」「地形」「歴史」の3つの視点があればできると考えています。

    実は、その考え方を基にした「地域事業の戦略立案」的な講義を首都大学東京(都立大学)で2年間やっていました。

    学生さんそれぞれが抱える問題意識をベースに「あなたが箱根に宿屋を作ったら」というテーマで事業計画を作るのが最終課題。その時ももちろん「土」「地形」「歴史」を軸に掘り下げるという手法を使いました。

    お時間のある時に記事を覗いていただけると嬉しいです。https://forbesjapan.com/articles/detail/31277

  • 経済活動止まる有田のお盆

    経済活動止まる有田のお盆

    価値観を理解し、風習を共有

    2019年8月25日佐賀新聞「ろんだん佐賀」寄稿

    お盆。佐賀の皆さんがよくご存知のこの風習は、都市部では、さほどに、その作法は知られていない。

    「風習」は略語で、正しくは「風俗習慣」。「慣習」の意味合いに近い。習慣を個人の行動様式に対して使うのに、慣習は集団の行動様式に使う。風習は祭りや伝統行事など、地域共同体の歴史的なイベントを指すので、お盆は風習に属する。

    日本の風習に疎い筆者が、お盆に興味をもったのは今から4年前。有田焼の仕事をしている時にある老舗の奥様から「その日は仕事がお盆なので仕事ができません。」と言われた時だ。てっきりどこかに遊びに行くのかと思い「どこに行くのですか?」と聞いてみたら、逆に驚かれて「ご先祖様が帰って来られるのに家を空けるなんてどんでもない。お迎えする準備やお供えやお参りがあるので仕事ができないのです。」と答えてくれた。

    筆者にとって経済活動より優先する行事があるということがとても新鮮だった。しかし、似たような理由で行事を優先する地域があるのを思い出した。八重山諸島にある竹富島だ。

    竹富島は住民364人(2019年現在)の小さな離島。前職の広報時代に、この島にリゾートを開業することになりテレビの密着取材が入った。テレビクルーに同行し、3週間ほど島に滞在した、ある夜、島で文化活動をしている若い人から「話がある」と呼び出しをうけた。当時、島にはリゾート反対勢力があり、若干のピリピリモードがあった。この人は賛成派だが、なにか怒られるようなことでもあったのかとビクビクしながら、話を聞くことになった。

    結論からいえば、その人は私の価値観を聞きに来たのだった。彼の質問は2つ。一つは「暗闇をどう思うか?」もう一つは「神様はいると思うか?」というものだった。私なりの考えを伝えたところ、腹落ちしてもらったようで、最後に次のようなお願いをされた。

    「これから、あなたは自社の広報だけではなく、この島の広報もしなければならない。わからないことがあればなんでも聞いてほしい。そして、一緒に島のために頑張りましょう。」と。

    島には全ての島民が参加する祭りがあり、仕事よりも学業よりも祭りを優先するので、毎年10日間ほどは島の経済はストップする。他にも都会では考えられない風習がいくつもあったが、その根底には、私に投げかけられた問いに対する答えがあるのだと悟った。

    地域で仕事をしたことがある人は経験があると思うが、自分のそれとは異なる価値観に対峙する時には、見直すべきことと尊重すべきことの見極めをしなければならない。神仏に関わることは尊重すべきことの一つだろう。地域の価値観を理解するのは体験するのが一番だが、残念ながら、その時期に訪れることがなく、祭りもお盆も体験には至らなかった。

    個人的なことで恐縮だが、今年の初めに夫がなくなった。8月に入って、ふと、窯元の奥様と神様の存在を信じているといった島民の方の顔を思い出し、作法に則ったお盆をやってみることにした。

    白い提灯を飾ったり、期間中ずっと精進料理を作ったり、お客様の相手をしたりで、なかなか忙しい。しかし、日本の風土的な習わしや、宗教という概念を超えた先祖や神仏の捉え方をじっくりと考えることができ、有田や竹富島の皆さんと共に語れる知見を得たような気がした。

    もし、皆さんがよそ者を迎える時には、ぜひ、色々な風習を共有していただけばと思う。残暑厳しい日が続きますが、どうか、みなさま、お身体ご自愛ください。

  • 小さな町に観光客がやってきた(下)

    小さな町に観光客がやってきた(下)

    地域ブランディングは「認知」から

    2019年6月2日佐賀新聞「ろんだん佐賀」寄稿

    地域観光はインバウンドだけに頼らずに、自力で戦略を講じられる日本人をターゲットにして彼らに何度も訪れてもらう施策を打つべきだ。前回(4月20日)の記事にはそう書いたので、今回は、それを踏まえて、地域ブランディングには「認知」と「魅力」が重要であることを書いてみたい。

    モノが売れない最大の理由は「存在を知らない」ことなので、まずは名前を知ってもらわねばならない。そのきっかけになるのが魅力だ。

    筆者は前職のリゾート企業時代、ブランド認知をあげる広報業務を担っていた。その企業では、全施設が季節と土地柄にあった「魅力」を年に数回打ち出し、広報はそれをメディアに記事として取り上げてもらい、広く「認知度」をあげるという取組みを行っていた。これは相当な労力がかかるが、10年前は、誰も知らなかった某企業を今や知らない人はいない。この状況をみると魅力と認知の効果は期待できる。

    話を嬉野市吉田地区に戻そう。吉田で行った「トレジャーハンティング」(以降トレハン)はとても好調だったが「次の手を打とう」とトレハンをやろうと言い出した張本人である窯元が言った。メディアは目新しさがなくなれば取材しない。そうなるとせっかく芽生えた吉田の認知がゼロに戻る。そう危惧したのだ。

     その窯元による新企画は、磁器の規格外品を販売するというものだった。規格外品は正規ルートで売ることができず、お金を払って産業廃棄物扱いにするか、陶器市で投げ売りするなどの、お荷物的存在である。

     規格外品を「魅力的」にするためにはどうしたら良いだろう。ふと思い出したのは、その窯元が語った言葉だった。彼曰く、職人にとって焼き物は「我が子」のような存在であり、例えキズがあっても、それは “えくぼやほくろ”のようなもので、子どもであることに変わりはなく、愛しい存在だ。そう語った。これには筆者も感動したし、他の人にも共感を得られると直感した。早速、組合で会議を行い、昨年の1月に5軒の“えくぼとほくろ”ショップを集落内にオープンした。

    オープンに合わせて県内メディアが取材し、記事にしてくれたおかげで、翌日から多くの人たちが吉田を訪れるようになった。だが、チーム吉田はすぐに次の手を打ったのだ。4月には窯元の工場内にフラワーアレンジメントを飾る「花巡り」のイベントを開催。10月には集落と工場内をキャンドルでライトアップした「吉田皿屋ひかりぼし」。そして今年の1月は窯元組合会館を窯元らの手でリノベーションをし、焼き物体験や嬉野茶がテイクアウトできるカフェコーナー(平日のみ営業)を設置したのだ。

    こうして3年前までは誰も歩いていない集落に今や、月平均600人(約1割がインバウンス)が訪れるようになり、今年のGWは過去最高の売上げを叩き出した。旅行会社は“えくぼとほくろ”を巡るツアーを造成し、月に2、3回催行される人気ぶり。外部の人間がいたとはいえ、ここまでを彼らはほぼ自力でやったのだ。

    魅力と認知の効果はご理解いただけただろうか。想像できない方は吉田に足を運ぶか「肥前吉田焼」でインターネットを検索してみると一目瞭然かと思われる。

  • 小さな町に観光客がやってきた(上)

    小さな町に観光客がやってきた(上)

    不思議な非日常が魅力

    2019年4月21日佐賀新聞「ろんだん佐賀」寄稿

    観光客を呼びこみたい。それはどの地域でも思うことであり、特に、現在、大挙して来日しているアジア圏からのインバウンドは魅力だし、2020年のオリピックも鑑みれば更に期待感は高まる。

    ただ、どれだけの人が自力でインバウンドを集客できるのだろうか。オリンピックもそうだが、現在増えているインバウンドはアジア圏の著しい経済成長や行政政策の影響によるところが大きく、オリピック後の観光経済は予断できない。アジアの富裕層は日本を飛び越えて旅行するかもしれないし、行政は貴方の商品の質まではあげてはくれない。インバウンドだけに頼らずに自力で集客ができる国内に目をむけ、彼らが一度ないしは二度三度来てもらえる戦略を講じる必要がある。

    地域観光を考える時、目をむけて欲しいのが、よその地域から来た人が何をみて喜んでいるかだ。地域には都市にはないものがある。佐賀県でいえば、磁器工場や茶畑、蓮根畑や酒造メーカの工場や棚田などがあげられる。地元の人にとって日常的な風景でも、よそ者にとっては心底ワクワクする光景なのである。よそ者が非日常だと感じるものの多くは観光拠点になる。

    佐賀県嬉野市に、よそ者がワクワクしたことを商品化したところ、住民以外誰もいなかった地域にメディアが集い、観光客がそぞろ歩きするようになった場所がある。市内から車で15分ほどのところにある吉田地区だ。ここは肥前吉田焼という焼き物の産地で、県内はおろか市内でも知らない人が少なくない場所だった。産地の経済はかつての8分の1という規模で30社あった窯元も8社(組合加盟)という散々たる状況だった。

    この地区にある老舗商社に眠る古い器を「お宝」に見立てて、一カゴ5000円詰め放題で販売する「トレジャーハンティング」(以降、トレハン)を行なった。薄暗くて今にも崩れそうな蔵は異次元に迷い込んだかのような不思議な非日常感。うず高く積まれた器は東京では見たことがないものばかり。お皿が埃まみれであることは一向に構わなかった。むしろ、それが本物感を醸し出しており、作りたくても作れない最高の演出だと思った。「これはイケます!」という言葉をなかなか信じない経営者を説得してサービスを開始。投資はほぼゼロ。地元の窯元有志らが蔵を整理し、東京に住む息子が手作りでWEBSITEを用意。軍手とカゴを買ったくらいだ。

    重視したのは「告知」。顧客に来てもらうためには、商品やサービスが世の中に存在することを伝えないといけない。ここは非常に重要だ。まず地元の飲食店とホテルや旅館の経営者を招待して最初に楽しんでもらい、トレハンのチラシを店に置いてもらった。彼らのお客様に「吉田に面白いものがあるよ」と紹介してもらうためだ。もちろん佐賀県内の全新聞社とテレビに声をかけて取材にも来てもらった。 こうして誰も歩いていない吉田地区にチラホラと観光客が現れるようになった。その中にはインバウンドの姿も。インスタグラマーが投稿したトレハンの写真を見て、はるばる海を越えて、吉田まで来たそうだ。ここから吉田地区の快進撃が始まった。

  • 地域魅力の見つけ方

    地域魅力の見つけ方

    土・地形・歴史を見る

    2019年1月27日佐賀新聞「ろんだん佐賀」寄稿

    皆さんはご自身の地域の魅力をどの位語れるだろうか。私たちの町にはなんの魅力もない。東京と地域を行き来するようになって13年、なんどとなく、この言葉を聞いた。しかし、どのような地域にでも必ず魅力はある。そこで「ろんだん佐賀」では数回にわけて「地域の魅力」について論じてみたい。

    筆者の本業は、企業や行政からの依頼で、地域の魅力を見つけて戦略に合わせたコンセプト立案をすることだ。ハードやソフトの企画を提案し、導入まで担う場合もあり、その時は都市と地域の間にある様々な距離感を調整することもある。

    コンセプトの基になる地域魅力だが、これは「土」と「地形」と「歴史」で説明ができる、というのが筆者の考えだ。特に重要なのは「土」である。土は、その土質にあった「産物」を実らせて、地域経済を成立されるからだ。これは農産物だけではなく鉱物も含まれる。他に、人と物の動きを左右する「地形」と文化に影響を与える政策などを「歴史」からみれば本物の魅力が見えてくる。

    「土」が地域魅力の源だということに気がついたのは、スペイン700キロを歩いた時のことだった。40日間、ひたすら西に向かって歩き、夜になれば地域のスペイン料理とワインを飲んで眠りにつく。あるデータによれば、人の視線の約6割が地面と言われている。つまり、筆者は当時、スペインの大地ばかりを見ていたことになる。

    スタート地点はピレネー山脈の麓にある砂漠地帯からだった。砂漠といっても乾燥に強い葡萄やオリーブはまばらに生えている。水分が少ないため、そこで採れる葡萄は小粒で果汁が凝縮されている。ゆえに、その葡萄から造られるワインはとても濃密なのだ。その他の農産物は無いに等しく、畜産は少しの草でも生きられる羊くらいだ。レストランでは、靴についた土ほこりを叩いてから入店し、濃厚な赤ワインとラムチョップを堪能した。

    さらに数十キロ歩くと小川が出現した。小川はどんどん幅が広がり、やがて船が行き来する水路になり、自分が都市部に入ったことがわかった。かつて、人間は陸路ではなく水路を使って物資を輸送した。インダス文明などの成立ちを鑑みると川と都市との密接な関係性についてはご理解いただけるだろう。ここではスペイン各地の食材を使った料理を食べることができた。

    ゴール地点は、海が近くて雨が多いガリシア地域。ぬかるみで靴は泥だらけになり、そのままレストランに入るのがためらわれた。とはいえ、この地域の食事は最高だった。平地には青々とした牧草が茂り、それを乳牛が食む。水分量の多い葡萄から造られるワインは酸味があって爽やか。最後の1週間はチーズとワインそれに海産物の食事を満喫した。

    紙幅の関係で充分な説明ではないが、土地の魅力を生み出す源は「土」だということがご理解いただけるかと思う。また、羊料理に合うのは濃厚な赤ワイン、チーズや海産物には酸味のあるワインが合う、と言われている理由も、同じ地域(土)から生まれた産物だから、ということでご納得いただけるだろう。次回は佐賀県の土ついて論じてみたい。